明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

古典を読む

 二年前から続けている古典読破の試み。

 最近の読了分。

 

舞姫森鴎外
『俘虜記』大岡周平
『斜陽』太宰治
『「いき」の構造』 九鬼周造
『蒲団』田山花袋 

『挟み撃ち』後藤明生

『木綿以前の事』柳田國男

『様々なる意匠』小林秀雄

ドン・キホーテセルバンテス
 以上、読了。


 正直『舞姫』は現代語訳を併読してやっと内容が完全に分かった。『斜陽』『蒲団』はふ~んって感じで、特になにも感じなかった。発表された当時は人物、特に女性の描き方が斬新だったのだろうっていうレベルの感想を持った。『俘虜記』は題名通り捕虜になってからの話で、レーズンだかとパンを作る時に使うイースト菌を使ってワインを作るエピソードが面白かった。
 『「いき」の構造』はビブリオバトルの紹介を見て急遽読んでみた。講談社学術文庫版は注も丁寧で、解説も理解の助けになって確かに面白かった。今月の文藝春秋佐藤優さんが『「いき」の構造』を下敷きにして、日本独自の外交の基盤になる考えを紹介していて、興味深く読んだ。

 『木綿以前の事』。柳田の本は昔高校生ぐらいのときに読んで、なんともいえない文体に辟易した思い出があった。誰だか忘れたけど、柳田の文体を「牛の反芻のようだ」って言ってたけど、まさにそんな感じ。でもこれはサラっと読めて良かった。内容は木綿と日本人って感じ。

 『様々なる意匠』。小林秀雄も昔高校生の時に『考えるヒント』で読んでいた。当時はあんまり感じるところが無かったのをうっすらと憶えている。長じて読んだ筒井康隆文学部唯野教授』だかで、印象批評をするには小林秀雄ぐらいの天才じゃないと無理wって言ってて、また興味はでてきていた。この『様々なる意匠』も批評がらみの評論。文学理論にのっとった批評も自らの深奥から湧き出る印象批評も同じ好き嫌いといった感情から出てきているから、どっちもそんなに変わらないよっていう主張。うん、まぁあなたぐらいの人になればそうなんだろうけど、普通の人はそうはいかんのですよ。

 『ドン・キホーテ』は長かった・・・。文庫で400Pが六冊もある大長編。正直マジかよって思った。でも面白い。翻訳もとても読みやすくて良かった。

 有名な風車に突撃するシーンなんて、ほんとに序盤の序盤のエピソード。実際の『ドン・キホーテ』はそこから始まるといってもいいぐらい。

 ちょっとしたことでドン・キホーテの騎士道精神が発動されてしまってドン・キホーテ達に限らず時には関係者達も酷い目にあってしまって笑える。基本的に教養豊かで頭のいいドン・キホーテと実は機知に富んでいて地頭のいいことが分かるお供のサンチョのやりとりは、当時のスペインの状況とかも分かったりする部分もあって興味深い。

 訳者も後書きで書いているように、前編の冒険と後編の冒険は少し色合いが異なってくる。前編はドン・キホーテ自身が引き起こすドタバタ劇って感じなのだけど、後編は、「ドン・キホーテ前編を読んだ作中人物達」がドン・キホーテを面白がっておちょくることで引き起こすドタバタ劇って感じ。読んでいるとドン・キホーテが不憫に思えてきた。

 『ドン・キホーテ』の偽の続編を書いた贋作者が作中に登場させたり、明らかに作者セルバンテス自身のうっかりミスなのにサンチョに「印刷関係者のミス」なんてメタな言い訳をしたり、当時実在していた大盗賊の頭首を登場させてみたりとかなりやりたい放題。思わず声を出して笑ってしまうようなこともしばしばだった。

 そこかしこでも指摘されているようにこの作品って『中二病』に罹った人の話だよなぁ。ちょうどTVアニメ『中二病でも恋がしたい!』を観ているから余計にそう思う。作中でドン・キホーテを始め多数の登場人物を魅了する「騎士道物語」もラノベにしか思えなかったし(笑)。大長編だったけど面白かった、さすがの古典だと思った。