明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『キラー・エリート 極秘諜報部隊ISA』マイクル・スミス著

キラー・エリート 極秘諜報部隊ISA (集英社文庫)

キラー・エリート 極秘諜報部隊ISA (集英社文庫)

ついに読了。いやぁホント凄まじい内容だった。『フルメタル・パニック!』の主人公が所属していた<ミスリル>が実在しているような感じだったので読みながら、えっこれってノンフィクションだよね?ね?って驚きながら読んでしまう内容だった。
 著者は元英国陸軍情報隊隊員らしい。そのため記述が相当詳細。やっぱり元同業者っていう経歴が大きいな。

 イーグル・クロー作戦の散々たる失敗を教訓に厳重に秘匿された極秘部隊である情報支援部隊ISAが設立された。その存在を知る数少ない関係者からは<アクティヴィティ>(なんて厨二的なネーミングw)と呼ばれたその部隊は議会の監視すら届かないほどの深い「階層」に存在した。本書は<アクティヴィティ>の設立から、フセイン捕縛までの活躍を描くノンフィクションだ。
 この本が出版された時、軍事マニアの中には静かに衝撃が走った。それまで出版された書籍を読んでいると、微妙に腑に落ちないというか疑問を感じることがあったという。明確な疑問となるほどではなかったそうだけど、この本の内容はそんな空白を埋める最後の1ピースだったと驚きを持って受け入れられた。この辺りは本書のラストで行われる訳者と福井晴敏さんの対談でも語られている。
 
 <アクティヴィティ>の主任務として、特殊部隊が任務を実施する為にその部隊が本当に必要とする情報を収集・支援するというのがある。『CIA秘録』を読めば分かるけど、CIAは昔からグダグダの組織にしか見えないし、中国大使館誤爆事件のせいで米軍の上層部の信頼を完全に失ったりしているから、米軍が独自に信頼の出来る情報を収集する決意をしたのはよく分かる。
 でも他の情報機関からしたら、商売敵とまでは言えないまでも自分のシマを荒らすような感じがしていい気分しなかったろうな。現にCIAからは嫌がらせを受けていたりするし(苦笑)
 確か『カーブボール』だったか、CIAから見たら軍の情報部は荒っぽいという指摘というか非難があったけど、やっぱり組織文化というか、そもそもの思考様式も仕事の進め方も違うから、衝突するのも無理は無い。

 『ブラックホークダウン』で出てきた登場人物の何人かは元<アクティヴィティ>やら現役の<アクティヴィティ>のメンバーが参加していたのがわかって驚いた。デルタのメンバーだと思っていたんだけど、言われてみればなんか他と違うよな。他にもこいつらこんなとこまで出張ってやがったのか!って思うぐらい色々なところで暗躍していて笑えてくる。
 『ブラックホークダウン』での舞台になったモガディシュの失敗(作戦目的自体は達成していたので失敗ではない)がずーっと米軍上層部に悪影響を残していて、ビン・ラディンがなにか企んでいるということを把握し、かつ暗殺の選択肢があったにもかかわらず、その悪影響が残っていたせいで暗殺は実行されなかったなど、新鮮な発見があった。
 しかし、日本人にとってビン・ラディンは9.11前の時点においては全く知られていなかったけど、アメリカにとっては知っている人は知っている危険人物だったのかな?
 米ドラマ『ホワイト・ハウス』でも、大統領暗殺未遂事件の首謀者の候補者の一人にビン・ラディンの名前が出てるもんなぁ。

 あと意外だったのが、米軍は特殊部隊に対して良い印象を持ってないというところ。なんでもエリート主義的な雰囲気を嫌うらしい。あんなに一杯特殊部隊を持ってるのに矛盾してないか?
 まぁ、反テロ戦争でその有用性が理解されたそうだから、いいのかな?
 あと、米軍の特殊部隊ってSASとSBSとよくつるんで特殊作戦に参加しているのが興味深かった。英米って仲いいなぁ~って思っちゃったよ。

 本当に濃ゆい内容の本だった。ちょっとお高いけど、特殊部隊や情報戦について興味がある人は必読の本だと思う。あと、アメリカに喧嘩を売るときは携帯電話を使わないようにしようと思った。そうしないと、<アクティヴィティ>に捕まっちゃうからね(笑)
 ビン・ラディンが長期間捕まらなかったのも、携帯電話を使わなかったからのも大きいのだと思う。っていうか、ビン・ラディン暗殺作戦にも当然この人たち参加してるハズだ。