明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『打ちのめされるようなすごい本 』米原 万里著

打ちのめされるようなすごい本

打ちのめされるようなすごい本

大変な読書家でロシア通の彼女なので時事ネタを挿みつつロシア関連の優れた本を紹介してくれていて、そちらの方面に疎い私にとって非常に勉強になりました。
政治的信条とかは好き嫌いが別れる人もあるかもしれないけど、博覧強記の彼女の読書エッセイはポジティブで大変読み応えがありました。

しかし、自身が癌に侵されていると知ってからは雰囲気が徐々に暗転していきます。
怪しげな民間療法に大金をつぎ込んだり、効果が定かではない治療法に頼ったりする著者の姿を見ると、あんなに闊達で批判的な精神を持ち優れた知性を持っている彼女にしても、弱った人間につけ込むような連中の誘惑にあがらう事ができないのだと暗澹とした気分になってしまう。
絶望の中でも有効な癌の治療法を探しつつ、病魔のため唐突に途切れてしまうエッセイに少し背筋がゾクっとした。