明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『火垂るの墓 完全保存版 [DVD]』

火垂るの墓 完全保存版 [DVD]

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火垂るの墓を観ました

なんか昔見たときの印象とエライ違う印象を感じました

昔見たときは可哀相な兄弟の話だったのに???

今まで覚えていたストーリーは

空襲で家を焼かれ、両親とも死別
ツテを頼って親戚の叔母さんの家に疎開するも
意地悪な叔母さんにイビリ出され、防空壕での生活を余儀なくされる
つつましい生活をしていたが、状況はそれを許さず、栄養失調で兄妹は
死んでしまう

なんという悲劇

という感じです

反戦アニメとして、この時期になると決まって放送されてますが、観るのが辛くて(っていうか軽いトラウマ、はだしのゲン並みっす)ここ10年ぐらい観て無かったです

でもなんとなく、こないだ放送されたのを観てみると、昔とは随分違った見方になってしまいました

今、あらすじをまとめるならこうなります

父親が海軍士官であることを利用して、戦時中としては恵まれた生活を送っていた主人公達は空襲で焼け出され、母と死別してしまう
その後、親戚の叔母さんを頼って疎開する
しかし、気ままなニート生活を送っていたのを咎められたのに逆切れして、なんの計画も無く防空壕での生活をすることに決める
両親の蓄えを短期間で使い果たした生活力の無い兄は、妹を栄養失調で死なせてしまい。自身も栄養失調で死んでしまう・・・

なんという悲劇

もう少し、なんとかすることが出来なかったのだろうか?
14歳の子供とはいえ、幼い妹を抱えているのに防空壕で生活するなんて無責任としかいいようがない

昔は、酷い人にしか見えなかった親戚の叔母さんも、今見たらチョット見方が変わりました
その理由は主人公の家庭の厚遇ぶり
チラッとしか描写されませんが、下の2点は主人公の家庭と一般国民の家庭の待遇の違い
がわかります

  1. 主人公達の荷物を親戚の叔母さんの家に運ぶ時、トラックを使用したとありますが良く知られているように当時は石油の一滴は血の一滴と言われるほど節約をしていたのにもかかわらず、そのような贅沢というか厚遇を受けていた。当然トラックを運転するには運転手の手配も必要になる
  1. 2、庭に埋めていた品々のありえない充実振り親戚の叔母さんがバターを見て「あるトコにはあるんやなぁ」と羨望のため息をつくほど海軍士官の特権を利用した横流し?を推測される

 
そりゃ、親戚の叔母さんも意地悪になるわけだ
一般の国民には贅沢は敵だと言って倹約を強いておきながら、地位のある軍人とその家族は厚遇を受けている
居候をさせてみたら、畑を耕すでも学校に行くでもなく、工場に行くでもなく気ままに遊ばれてしまえば、嫌味の一つや二つ言いたくもなるだろう
叔母さんの家も余裕がある訳ではなく、作中で叔母さんも言う通りいつ空襲で焼け出されるか分からない状況だし、なおさらだろう

妹の面倒を見る以外は、奇妙なまでの清太の無気力な行動だけど、母親を失ったために投げやりな気分になっていたと考えられなくは無い。だけど、防空壕での生活を決めたとたん溌剌と準備する姿を見るとどうにも納得できず、チグハグな行動に感じてしまう
ウィキの「作品の背景」の項を見てみると、この作品の原作は作者の野坂氏の妹への鎮魂の為に書かれたとあるからその辺り、物語の完成度よりも氏の気持ちが優先してしまい、物語の構造が歪んでしまったのかな?

物語自体の出来は正直よくないこの作品が高く評価されるってのは、やはりスタジオジブリのブランド力って大きいなぁって感じます