明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『歴史と軍隊 ~軍事史の新しい地平~』 阪口 修平著

歴史と軍隊―軍事史の新しい地平

歴史と軍隊―軍事史の新しい地平

今までの決戦の勝敗や軍隊組織の発展を分析した「狭義」の軍事史とは違い、軍隊と歴史の他のの領域との相互の関係をも視野に入れたいわば戦史である「狭義の軍事史」に対して広義の軍事史を扱ったという本書。
この広義の軍事史ですけど、欧米では何十年も前から扱われているけど、日本では左派の影響力が強いせいか、出遅れてたみたいです。

そのせいか、本書を読んでいても正直まだ手探りなんだなぁって感じがしました。論考自体が玉石混交だなって感じました。
私の不勉強なせいか、○○についての解説は分かったけど、それで何が言いたいんだろうって思った論考もありました。
歴史群像の記事と同じような水準の内容もあり、学術書ならではといった内容を期待していた私にとっては少し肩透かしを喰らいました。

面白く感じたのは。
第四章 「近世プロイセン常備軍における兵士の日常生活」
この時代の一般兵士の生活を描いているほとんど唯一と言っていいブレーカーの自伝のを中心にして解説。
訳者本人の解説やブレーカーの自伝から当時の兵士の生活を論じていて非常に面白かった。いつかブレーカーの本も読んでみよう。

第七章 「初期近代ヨーロッパにおける正戦とプロパガンダ」
ヨーロッパにおける正戦論の流れを軽く押さえた後、プロイセンオーストリア継承戦争の時に行った戦争に対する正当化をどのように訴えたのかを論じてあった。
フリードリヒの「反マキャヴェリ論」が題名から想像できる内容とは全く異なるにも関わらず誤解されていたあたりが面白かった。

第八章 「セギュール規則」の検討
将校になるには4代前まで貴族であった証明をしなくてはならないと定めたこの規則は、長らく貴族反動の象徴だったけど実はある意味軍事的合理性があったことと、非貴族である平民に対しても時間はかかるが将校への道は開かれていた(革命後ほどではないらしいけど)ことを論じてあった。

五章を除きほぼ独仏のことを扱っていた。
日本でのこの分野での本となると『日本の軍事革命』が当たるのかな。