明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

やる夫の鎌倉幕府シリーズ

やる夫の鎌倉幕府シリーズ読破

すばらしいシリーズだった。2ちゃんねるって『まおゆう』とか、時々こういう奇跡のような読み物が出来るから凄いわ。

 これを読むまで、あまり興味の無かった源平合戦とか鎌倉幕府に興味が出てきたし、義経と頼朝がどのような人物だったのかが分かって面白かった。特に頼朝の政治能力のチートさには笑った。源義仲の戦功を戦うことなく分捕るあたりは爆笑モノの政治手腕だった。
 義経についても軍事能力はチートなくせに政治センスが皆無というかマイナス補正が付いてんじゃね?っていうぐらい酷くて、兄頼朝に見限られていく様子が余すところなく描かれていて、この辺りの事情を良く知らなかった僕にとって新鮮な驚きを与えてくれた。正直、今まで義経が頼朝に疎んじられていく理由が分かんなかったんだよね。
 
 最近、鎌倉幕府の成立の年が1192年じゃないっていう説が出てきて、??ってなっていたが、これもこのシリーズを読んでいると納得できる。何を持って幕府成立というのか?という定義の問題だったんだね。ある時期に一気に鎌倉幕府が完全な形で出現したわけではないから、こういった説にも説得力があるという話に過ぎなかった、と。

 あと、御成敗式目を初めて読ませてもらった。20年以上に渡って平穏に土地を占有していたら、その土地は自分のものになるっていう、今の民法の条文そのままな条文が入っていたりして笑った。意外と日本人の土地を巡る観念って、この時代に完成したんじゃなかろうか?
 各武士連中も土地を巡ってすぐに武力、裁判で争ってたし、これを裁いて蓄積された判例がずーと今まで続いてきたのなら、面白いなぁ。

 各登場人物の配役も本当にお見事だとしか言いようがない。このシリーズに登場する元ネタの作品は知らないものの方が多く、特に主役級に多く配役されているガンダムSEED、DESTINYは全く知らなかったし観る気も無かったが、このやる夫シリーズを読み終わったら興味が出てきて、ちょっと観てもいいかな?って思えるようになった。
 配役で一番のお気に入りは
源義仲-ハルヒ涼宮ハルヒの憂鬱
那須与一-ゴルゴ13ゴルゴ13
日蓮-糸色望さよなら絶望先生) 
かな、日蓮は「絶望した!」っていうフレーズが巧みに使われていて爆笑モノだった。何気に後白河天皇の取り巻き連中とかも笑わせてもらったかな。ああそうだ、麻呂も忘れちゃいけないな(笑)。

 高校生の時、末木文美士著『日本仏教史―思想史としてのアプローチ』を読んで、鎌倉時代に傑出した宗教者が数多く出現したことがイマイチ理解できなかったけど、このシリーズを読んで大混乱していたこの国の姿を垣間見れることができて、なんとなく理解できるようになった。
 世の中が乱れれば宗教が民衆から支持を受けるのは今も昔も変わらないってことなんだな。当時の特に僧兵の乱れっぷりは白河天皇の嘆き「賀茂河の水、双六の賽、山法師、是ぞわが心にかなわぬもの」なんてどころじゃなくて、凄まじい乱れっぷりだった。
 ヨーロッパでルターとかが宗教改革を始めた時の状況も酷いものだと思ったけど、源頼朝が活躍していた日本の状況ってヨーロッパとは比較にならないぐらい酷くて呆れたわ(笑)。