明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『新約聖書を知っていますか』阿刀田高著

新約聖書を知っていますか

新約聖書を知っていますか

新約聖書は使徒達の手からなる27書の文書から構成されるキリスト教聖典。ホテルとかに良く備え付けられていて、時々パラパラと読んでみたりしたけど、今一つ物語としての面白さを感じることができず興味を持つことが出来なかった。
 新約聖書の成立する過程について扱った『書物としての新約聖書』を読んで新約聖書の中身に興味が出てきたけど、いきなり読んでも理解できそうになく敬遠していた。
 しかしながらこの本を読み終わって、新約聖書を読んでみたい気になった。おそらく阿刀田さんのこの本が無ければ、新約聖書を読む気にはならなかったろうな。
 
 内容的にはいつもと同じように、新約聖書に沿った解説をしつつ自らの考えを述べていくというスタイル。
青年期の行動が不明なキリスト(ユダヤ教の深い学識があったことや、宗教について深い)に対して、小説家らしい想像力と深い忖度による解釈は非常に面白かった。史実の捉えづらいキリストの姿を現代の私達に理解しやすいように浮かび上がらせていると思った。

 しっかし、これを読んでいると生前のキリストの段階の使徒の情けないというか、トホホさ加減は凄い。有名なエピソードとしては、ペテロがキリストのことを知らないと群集に向かって言い放つ事といい、キリストから寝ずに私を待てと言われながら寝てしまったり、偉大な宗教の始原にいた使徒の言動とはとても思えないわ
 
 新約聖書の冒頭はイエスの父系の系譜が、アブラハムから連綿と続いていると書き綴っているけど、イエスは処女懐胎で生まれてきたのだから、この記述は何の意味があるんだろうという指摘にはハッとした。
 確かにそうだよなぁ、一応マリアの方にもやんごとない系譜が存在するらしい(民間伝承による)けど、父方については関係ないものね。

 あと、史的よりなキリストの生涯を描いたやる夫がキリストになるようです。も面白かった。随分昔に読んだやる夫シリーズだけど、思い出しながらこの本を読んでいました。