『歴史認識を乗り越える (講談社現代新書) 』小倉紀蔵著
- 作者: 小倉紀蔵
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/12/17
- メディア: 新書
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とても面白かった。韓国と竹島でこじれている今だからこそ、この本を読んで冷静に対処すべきだろう。まぁ、日本は十二分に冷静だけどね。
題名だけみると、どっちかっていうと左派系の論考なのかなぁって思いながら読み始めると、そんなことはなく著者の理知的でバランスをとりながら考えていく姿勢に好感を抱くことになった。
戦後補償に吝嗇すぎたっていう批判にはちょっと疑問。それなり以上に日本は戦後補償をしてると思う。まぁ、人類が2回しかしていない世界大戦の戦後補償が、1+1=2みたいな単純な積算で出来るとは思えないし、考え方の相違以上のものではないのかな。
それと一番心にヒットしたのが以下の文章。〔〕内はブログ主による補注です
さて、日本人が〔道徳的な〕<上位者>たる韓国人を<ゆるす>ことによって、現実
には何ら位階秩序の変更なしのまま、仮想的<優位>に立つというのは、明らかに歪
な関係だ。
さらに関係が歪になれば、この〔現実的、経済的に〕<優位>な下位者たる日本人
が(道徳的な)<上位者>たる韓国人に奉仕する道を選ぶことになる。あたかも自己
が日本人ではないかのように、すなわち日本人の過去の罪を自分の身は免責されてい
るかのように、韓国人の側に寄り添って日本を攻撃する人士をわれわれは時に見つけ
る。これは<ゆるす>を通り越して、韓国人と同じ論理で日本人を蔑視する、すなわ
ち自己の幻想上の<優位性>を放棄してまでも現実の<上位性>を獲得しようとす
る、一種の冒険主義である。このような冒険的態度の日本人を韓国のマスコミ(およ
び日本の一部のマスコミ)は賞賛するのを好むが、多くの場合、本能的に「醜い」印
象を与えもするのだ。
48~49頁
日頃感じているモヤモヤを見事に説明されていて驚いた。
どこかのコピペで
韓国の歴史はファンタジー
中国の歴史はプロパガンダ
日本の歴史はヒストリー
っていうのを読んだことがあった。確かに中韓の歴史は「こうだった歴史」っていうより「こうあるべきだった歴史」ってイメージがある。
著者は朱子学を基になぜこういう中韓両国と日本の心性の違いが生まれたのかを説明している。これは納得できるところもある反面、そんなに深層からくる行動なのかなぁ?って疑問を感じた。
この分析を行っている部分は本書では特別理屈っぽい所なので、正直少し浮いているなって感じた。この部分はもっと平易にして欲しかった。この部分はそこまで厳密に論証をしなくても全体にはあまり影響しないと思ったし。
右派左派はもっとお互いに交流して、思想の垣根を越えて議論していこうとか、歴史教科書の提言の部分に関しては、ヨーロッパの試みの様に日中韓で共同の歴史教科書を使用するのは今のところ絶望的なので、コラムのような形で他国はどのように教育しているのか紹介するような形ではどうか?と著者は提言している。
うん、まぁ、常識的で手堅い提言だと感じた。なんとなく物足りないものも同時に感じてしまったけど。
冒頭の小説?の意味が最後まで読んでも掴めんかった・・・。不覚。