『理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性』高橋 昌一郎著
理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
- 作者: 高橋昌一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/06/17
- メディア: 新書
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以下、まとめと感想
1、選択の限界
真に合理的な選挙方式の模索
投票のパラドックス(コンドルセ、ボルダ)からアロウの不可能性定理を解説し、投票様式の違いで異なるタイプの勝利者が出現することを防ぐような、完全民主主義は不可能であることを証明した。
具体的にいうとアロウの不可能性定理とは社会が満たす4条件
1、個人選考の無制約性
2、市民の主権性
3、無関係対象からの独立
4、非独裁性
と個人が満たす2条件
1、選考の連結律
2、選考の推移律
を置き、これら全てを満たす「完全民主主義モデル」は論理的に矛盾が発生することを証明した。
さらに、1973年にミシガン大のアラン・ギバードとウィスコンシン大のスーク・サタースウェイトによって独立に発見された「ギバード・サタースウェイトの定理」では、独裁者の存在を認めるような投票方式でない限り、戦略的操作が可能になるというもので、いかなる民主的な投票方式に置いても、必ず戦略的な操作が可能になることを示した。
2、科学の限界
クーンのパラダイム論からファイヤーアーベントに繋げて語っていた。正直目新しさは感じなかった。サイエンスウォーズとかには一切触れていないけど、アリなんだろうか?
他の章に比べて、この章は大雑把な感じがした
3、知識の限界
スマリヤンの「抜き打ちテストのパラドックス」を中心にゲーデルの不可能性定理まで。この章はなかなか面白かった。
全体的にサクサク読めるし、人類の知性というか知的活動の現時点での成果を知ることができて興味深かった。