『皇軍兵士の日常生活』一ノ瀬 俊也著
- 作者: 一ノ瀬俊也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/02/19
- メディア: 新書
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全体的に著者の狙いのテーマは上手く処理できていないのでは?って感じた。特に「不公平」を扱った部分では、著者はこの問題は「差別」だと言ったり「区別」と言ったりしているけど、そもそものこの本での「差別」「区別」の定義自体がされていないまま話が進められているので、すんなりと著者の言っていることを受け入れることが出来なかった。そのため、先に結論ありきなのかな?って感じてしまう部分が出てきてしまい、その点について残念に思った。
入営~軍隊生活~戦死の一連の流れと皇軍兵士~軍~銃後社会の対比がとても興味深かった。この点では著者所有の多くの貴重な一次資料などを基にしているため説得力があった。
民衆は軍部にひたすら抑圧されていたというイメージがあったけど、民衆側も軍に対してある種圧力をかけていたことが分かるし、軍部も意外なほど民衆に対して配慮をしていたことが分かって興味深かった。ひょっとして、軍部悪玉論自体が日本人が全ての責任を軍部に押し付けたことによる幻想なのかも?とまで思った。
現代日本の派遣・正社員や格差問題などの問題に通じる日本人の思考様式や行動パターンが、戦時下日本社会でもすでにその原型ともいえる姿を現していることを知ることができた。この辺りは著者の狙いは成功しているといえそうだ。
テーマに対して、本書の内容がキチンと対応していないように感じたけど、幅広い一次資料を基に戦時下日本の本当の姿を炙り出している点は高く評価できると思う。また、徴兵逃れの様々な方法といったトリビアな知識や兵隊達が親分子分な義理人情な関係を持つことへの明快な否定が、軍によってなされていたなど色々なことが書かれていて面白かった。