明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『可能世界の哲学―「存在」と「自己」を考える (NHKブックス) 』三浦 俊彦著

可能世界とは、必然や可能、偶然を取り扱う現代論理学の一分野である様相論理学の理論的な装置として考え出された概念で、本書はその可能世界論のスリリングな解説書。
解説書ではあるけど、結構細かな議論(著者によるとこれでも随分簡略化したらしい)があって、読むのに手こずった。類書をアマゾンで探してみたが、ここまで可能世界をとりあつかっている本はないみたい。
可能世界という理論的な装置を使って考えれば、古来から議論されていた命題がかなりクリアに解決できるようになり、例えば

1、Pであるならば、必然的に、Pは可能である。
2、Pが可能であることが可能ならば、Pは可能である
3、Pが可能であるならば、必然的に、Pは可能である。

などのそれまで真であるか偽であるか、それともこの命題群はそもそも意味がある命題なのかどうかという問題に対しても明快に、これらの命題の意味しているところを理解出来るようになったりできる、色々と使い勝手の良い概念らしい。

ただ、方法論的に可能世界を導入する立場から、そもそも可能世界は実在するという立場(当たり前だけど、本気で主張している人は世界でも数人ぐらいらしい)の解説にはちょっと付いていけなかった。
前半は複雑な問題をクリアにしていく様子を楽しめたが、後半はクリアにしていく手法そのものがはらむ問題を解説していて細かい議論が展開されていくのでちょっと退屈だった。