明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『狼群作戦の黄昏 (新戦史シリーズ)』 ジェオフリイ ジョーン著

狼群作戦の黄昏 (新戦史シリーズ)

狼群作戦の黄昏 (新戦史シリーズ)

WW2で猛威を振るい連合軍を苦しめたUボートによる通商破壊戦の記録。Uボートと英米のハンター・キラー達の戦闘や、しばしば引用されているUボートの教範(戦闘マニュアル)でUボートの行動原理がわかり、面白かった。
 Uボートの教範には「相手よりも早く見つけて相手よりも早く攻撃しろ」とか書いてあったりして、F22ラプターの「first‐look‐first‐kill」かよって笑ってしまった。まぁ戦闘の普遍的な原理ではあるけど、潜水艦(というより当時は可水艦ぐらいの存在だけど・・・)と戦闘機の戦い方が酷似していたのが意外だった。

 戦争序盤にはまさに猛威を振るったUボートの狼群戦術だけど、英米の対潜技術の発展とともに1943年後半にはUボートの「平均寿命」は80日になってしまったりと、追い込まれていくUボートの姿を読めて興味深いノンフィクションだった。

 大体に置いて、通商破壊戦というのは、忍耐と努力との積み重ねが必要で、退屈さを耐え抜き地味なルーティンワークを忠実にこなさなくてはならない「裏方の戦い」だ。戦艦や空母艦隊などによる華々しい大艦隊決戦などは一切出てこない。でも、海軍戦略におけるシーレーンの重要性を考えると、艦隊決戦よりも重要な戦いだと思う。
 
 しっかし、苦しい中でも(苦しい中だからこそ?)ここまで海上護衛戦に国家リソースを割ける英国って本当に「島国の戦争のやり方」を熟知しているなぁって思う。王立海軍の弟子を自認していた某帝國海軍とは大違いだ。故大井参謀が読んだら、きっと泣くだろうな・・・
ロイヤル・ネイヴィーってへたれなんじゃないの?
http://mimizun.com/log/2ch/army/989937795/
のスレを思い出しながら読んだ。

 あと、私は「群狼戦術」の表記の方に親しんでいたので、書籍名で使われている「狼群戦術」には少し違和感を感じてしまう・・・。ドイツ語では「Wolfsrudeltaktik」なので「狼群戦術」の方が訳としては忠実なのでいいのか。