『軍法会議』花園一郎著
- 作者: 花園一郎
- 出版社/メーカー: 新人物往来社
- 発売日: 1974
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この本の凄いところは告発している軍人がほとんど実名で書いているところ。
普通こういう批判的な戦史系の本って著名な軍人(それこそ将軍クラス)以外はイニシャルで誤魔化すみたいだけど、本書は容赦なく実名で書いていっています。
それだけでも私にとって驚きだったんですけど、なによりも内容が衝撃的だった。
陸軍軍人でのエリートでもある陸士出のくせに敵前逃亡まがいのことを何度も繰り返す人間やら、些細な事で従卒を木に縛り付けてそのまま殺してしまう人間やら、信じられない連中が目白押し(当然実名で出てます)。
大したこともしていないのに下士官兵、陸士出ではない士官は厳格に処分しているのに、陸士出のエリート士官達はほとんど責任を取らされず、うやむやに処理されてしまう・・・。
そのアンバランスさは本当に常軌を逸している。
著者によると、明治時代の建軍当時は武士の気風が残っていて、士官には大きな失敗をした場合には自決するという暗黙の了解があったため、死刑に値する刑罰が用意されなかったということが、そもそもの原因らしい。
昔はそれでもよかったけど、刑罰が用意されていないんだったら、自決すらそもそもしなくてもいいと考える陸士出のエリートは自分に都合よく考えるようになって、結局昭和のエリート士官たちはどんなことをしでかしてもお咎めなしという状態になったそうだ。
戦闘神経症に罹った兵士をぶん殴って更迭されたパットンとか、奇襲とはいえ不意打ちの責任を取らされて更迭された真珠湾基地の司令官とかの米軍の件とか知っているだけに、旧軍の無責任なグダグダ加減には本当にウンザリします。
当時の軍法会議の進行やら、法律の運用やらが実際に携わった実務家らしく、詳細に書いてあったので昔から軍法会議に興味があった私にとってはそういう部分でも非常に勉強になりました。
古書販売会で偶然見つけた本だったけど、掘り出し物だった。