明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略』 W.G. パゴニス著

山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略

山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略

湾岸戦争で米軍の兵站を支えたパゴニス陸軍中将(William G. Pagonis)の回顧録。現代戦における兵站管理がどのように行われるのかを知る貴重な本だと思う。

 軍隊を支える兵站については、クレフェルトの補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO)などの復刊などもあり、参考資料がそろってきて大昔に比べて兵站について容易に知ることができるようになった。
 本書も軍隊の兵站を知ろうとする時に良く挙げられる良書だ。湾岸戦争の時の後方支援の責任者の手による本書は、兵站というものの重要性と実行することの困難さを知ることが出来て面白い。

 この本を読んでいると、米軍の人材教育の巧みさというか、人事管理の巧みさには思わず唸ってしまった。パゴニス自身の適性もあるが、どちらかというと問題児だったパゴニスに対してしかるべき人事配置と教育を施す辺りは本当にすごいと思った。本書でパゴニスが湾岸戦争で後方支援の責任者となるまで、どのような人生を送り、どのような軍務を果たしていたかが描かれているけど、本当になるべくしてなったというか、パゴニス以外に適任者いないんじゃないかって思えてくる。ベトナム戦争以降、米軍も真剣に組織改革を進めていたとの事だけど、その成果が出たって感じを受けた。
 しかし著者のパゴニスもそうだけど、パウエル、シュワルツコフといい米軍は人材豊富だなぁ・・・って読みながら思った。

 冒頭で挙げられている、見るだけで頭がクラクラしてくるような大物量を円滑に動かし、軍隊を起動させていく後方支援を行う上で、責任者であるパゴニスがどのような問題に直面し、どのように解決していったかを知ることは、現代の戦争についての理解を深めることでもあると思う。

 最後でビジネス関連の事を絡めて一章を割かれているんだけど、軍オタからはあまり芳しくない評価をされている。個人的にはビジネスという視点から見た兵站のマネージメントというか、軍隊というものの存在を解説しているように読めて、なかなか面白かったと思う。ただ、経営戦略に生かそうとするならば期待はずれになると思う。
 たぶん軍事物はあまり売れないので、むりやりビジネスに絡めただけで(こういった軍事物はよくある)ビジネス書として本書を読むのは間違いだと思う。

  翻訳についてだけど、有名な佐々淳行さんが「監修」っとなっているだけで翻訳した人が表紙にクレジットされていない。最後のほうのページで8人ほどの名前が挙げられているけど、彼らが翻訳したのかな?
 2,3ヶ所ほど?って思った部分があっただけで、とても読みやすい翻訳だった。