明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門 』佐藤 優著

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

実に面白かった。
 著者については、立花隆さんとの共著『ぼくらの頭脳の鍛え方』を読んで以来、まとまった著者の読書論を読んでみたいと思っていた。本書は高い評価を得ているのを知って購入に踏み切ったのだが、何度も通読するほど引き込まれてしまった。

正しい方法論を確立するために重要になるのは、時間という制約要因について、常に頭に入れておくことだ。
(中略)
その時間、他の勉強や仕事に取り組むことによって期待される成果との機会費用について考える必要がある。


 知識を確実に身につけ、人生を実り多いものにするために知力を鍛えるための正しい方法とは具体的にどういうものなのか?
 著者は知力を高める確実な方法は正しい読書法をマスターすることにあるとし、正しい読書法を身につける方法を懇切丁寧に説明してくれている。
 時間という制約条件の下、最大限のリターンを得る為に速読術をマスターすることが必要とされているけど、著者はその速読術の前提として熟読術をマスターすることをまず要求している。本を熟読するということは、どのように本を読んでいくかについての判断力を涵養する事につながり、熟読術をマスターすることは結果的に速読術も同時にマスターすることだと著者は主張する。

 そこで熟読術とはどんなものかと読んでいくと、まずは本を読んで理解する為に必要な基礎知識を再構築するようにと書いてあった。その基礎知識とは高校レベルの知識だとされていて、この知識を基礎として再構築することが必要だとして世界史、日本史、政治、経済、国語、数学に渡りお勧めの高校の参考書多数を挙げられている。
 今まで何冊も読書論の本は読んできたけど、良心的な大抵の読書論は基礎知識の重要性を謳っている。しかし、高校の参考書を何冊も挙げて基礎知識の構築をするように言ってくるのは、この本ぐらいだと思った。きっと著者にすれば最低限この程度は基礎知識として必須ということなのだろう。

 肝心の本の読み方といえば、基本的に本は購入して出来るだけ汚く読むことを著者は薦めている・・・。
 私は図書館派なので、なかなか実践できそうに無くて、いきなり躓く(汗)
 気を取り直して読み進めると、熟読の技法として基本書は最低3回読むことが推奨されていた。

 一回目は2Bのシャーペンで線を引きながらの通読
 二回目はノートに重要箇所の抜き書きをする
 三回目は再度通読する

 図書館派は一回目からして躓いてしまう・・・(汗)
 ノートに重要箇所の抜き書きぐらいならしているんだけど、借り物の本に書き込むことは出来ないしなぁ・・・
 こういった読書術を扱った書物は大概といっていいほど読む本は購入することを勧めいていて、図書館で借りることを薦めているものはほとんど無いのはどうしてだろう?
 きっと自分の本が売れないと印税が入ってこないからかな(笑)
 図書館派の読書術は呉智英さんの『読書家の新技術 』ぐらいしか思い出せないや・・・。
 時間は希少財だっていう佐藤さんなら可処分所得も希少財っていうことに同意してくれる・・・はず。

 例として挙げられている基本書は、このくらいのレベルの基本書を読む時の読み方の指針に出来そうだった。
 基礎知識を整えた後で読む基本書の読み方の具体的な方法も詳しく紹介されていて、本書ではナショナリズムをテーマに三冊の読み方を紹介されている。

 ベネディクト・アンダーソン 『定本 想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』
 アーネスト・ゲルナー 『民族とナショナリズム
 アントニー・D・スミス 『ネイションとエスニシティ 歴史社会学的考察』

『定本 想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』はともかく『民族とナショナリズム』って基本書なのか・・・(汗)
 この本がどういう本かという著者の紹介を読んでいると、とんでもないほどの予備知識が必要になりそうなんですけど・・・。確かに基本書も読む順番が大事って仰っているけど、この本を読む順番って相当後々のほうになりそうな予感がする(苦笑)

 今年から読書ノートをつけながら読むようにしているのだけど、イマイチ納得の出来る読書ノートの付け方がわからなかった。本書では読書ノートの取り方を丁寧に解説しているので非常に参考になったし、縁遠くなっていた高校の参考書を含め、幅広い書籍を紹介されているので書評本としても読める、大変費用対効果の高い本だった。