明け方ごろの読書日記

ほぼ読んだ本の備忘録にしています。たまに映画や身辺雑記的ことも書いています。2014年2月から3月までの記事は、2009年頃から2014年3月までに読んだ本を時系列無視で一気にアップしたものです。

『心理戦争』パウル・ラインバーガ著 続き

今回は抜粋を少し。

『心理戦争』
「」内はほぼ引用文

 掲載ページ数不明。

「心理戦争の勝利は、それが援護することを予想されている軍事的勝利にのみ存在する。心理戦争の敗北は批評家や敵宣伝者が敗北だと言ったとしても、それは実戦の敗北がそれを現実化して初めて証明される。心理戦争の計画は常に軍事作戦の援助のための臨機の計画である。それは軍事作戦に依存し、それが表面上支援している軍事作戦の面を除いては事実に印して点検するというわけにはゆかない。不幸なことに、その計画は常にこれらの留保を心にとどめて起草しなくてはならない」

 「諸計画と企画」 P.205

「白色宣伝または公然宣伝とは確認された出所、通例政府または政府の一機関より発せられる」

「黒色宣伝または隠密宣伝とは真実の出所以外の表面上の出所を有し、通例攻撃の対象となる地域の国内法では非合法的な言動をなすものである」

「ラジオなどの宣伝の際の話者は、その外国訛りを隠す努力をしないほうがよい。敵国語を完璧に話す人間に関しては常に「一体、奴等はあそこで何をしているんだろう」という疑念がつきまとう。裏切り者は公然たる敵方の代弁者よりも人に訴える力が少なく、裏切り者がそもそも敵方に通ぜしめるためには、センセーショナルなまでに優秀でなければならない。」

 心理戦争担当者の資格について 掲載ページ数不明。

「有効な心理戦争担当者には、次の5つの技能が一個人に結合されていることを要する

1 自国の政府の運営や政策に関し効果的かつ生きた知識を持ち、政府の目的や企画を的確に把握しうること

2 正確な陸海軍の手法に関する効果的な知識、併せて宣伝文句を軍事情勢や実際の宣伝活動に接合する形に調整するに必要なだけの陸海軍の戦術の理解を持っていること

3 情報手段、少なくともその一つ(出版、雑誌、新聞、ラジオなど)またはこれと密接に関係した分野(実際政治活動、視覚教育、成人教育など)に関する専門的な知識

4 ある地域に関してその言語、伝統、歴史、実際政治、慣習に関する生の知識に基づく特定地域に関する詳しい専門的な理解

これらに加え当人を完全なものにする第五番目の技能が考えられる

5 心理学、人類学、社会学、歴史、政治学または類似の分野に関する専門的・科学的理解

自分はこの五つの資格を全部有していると立ち上がって言えるものは嘘つきか天才か両方かである。しかし、資格は重要である。
各心理作戦班はこれら諸技量をつきあわせたものである。ある班員はまず2、3の技量を持っており、他の者は事実上ぜんぜんこれらの技量を持っていない。しかしそれら班員はすべて特に専門化した任務(暗号係、兵器専門家等)を除けば、これらの技量をつき交ぜた専門家裸足になる。
専門的な標準に達しないかもしれないが、すでにこれらの一つまたはそれ以上の物と付き合ってきており、各技能の基本原理を会得し、少なくとも自分の知っていることと知らないことが判るようになっているのである」


 以下、他のページから。

 「時期を得ることの必要」掲載ページ数不明。
「宣伝は新聞のようなものであり、無限であるか全然新しいものでなければならない。その中間では何らの価値はない」

 「敵国の世論分析」掲載ページ数不明。
「世論分析が有効であるためには体系的でなけらばならない。敵国から逃れてきた避難民は、色々と自分達が見てきたことを嬉々と話す。
だが、彼らの見解は無価値である。
一般に敵が何を考えているかは、味方の軍隊がすでに敵の周辺に入らない限り無価値である。内報者が敵はこう考えていると言うのはもっと価値がない。
あなたは何を今考えていますか?
あなたは何を考えていると思いますか?
という質問と同様である。

実際的であるためには、それは特定的なものでなくてはならない。
あなたは新しい洋服の値段をどう思いますか?
あなたは現在の俸給に満足ですか?等
ある人が考えること、すなわち彼の見解は彼が現実に行うことと関係して初めて有効である。現実の生活においては彼の見解は、それがある集団の見解の一部であるときにのみ効果を発する」

 2011.5.8追加
 「日本の状況」p121(日本の心理戦争への評価)。

「日本人は心理戦争において新しいものを生み出すことは少なかった。彼らは米国内の相手に対しすばらしくかつ公正にニュースを使用した。彼らは実際、米国の諸都市に事務所を持っていた平時よりも、戦時において却て遙かに多くの日本の公式のニュースを米国紙に乗せることができた。彼らは新聞社のためすでに編集済みの米国新聞用の英語モールス電報による定期の同盟通信のサーヴィスを維持する方法によった。日本人はニュースに署名入りで、特に米国紙に対し、「東部戦時時間午前九時までどうぞお待ちください。有難う。同盟」と言ったとさえ伝えられている。アジアの民衆に対しては、日本の特務機関が破壊的活動とともに多くの「黒色」宣伝を行ったが、基本的技術の使用については創意を発揮することが少なかった。彼らの主な長所は勤勉、忍耐、第一級のニュース提供であった。」